*ラルフ ~アルドニア王国「ハーランド修道院」にて~
「俺の名前、覚えてる?ラルフって言うんだ。さすがに覚えてるよな」
「…………」
黙り込むソルトに、俺は気にせず話しかける。
「今、何してんの?いつもここにいんのか?」
「……」
「ここ、綺麗なとこだよなー。ずっといたい気持ちも分かる気がする!」
「…………」
「しっかり手入れされてんのな。この庭園は誰が管理してんだ?やっぱ修道女達?」
「……」
ソルトの反応は依然として無い。俺はどうしたものか、と一度口をつぐんだ。
ふいに、俺はソルトが隅に置いていた数冊の本を視界に入れる。一番上の絵本のタイトルを読んだ途端、俺は目を細めた。
「……なぁ、ソルト」
「……」
「お前、『復讐』に興味あるの?」
「…………」
「『それ』、復讐の話だろ」
「……あっ…」
俺はソルトの持つ本をひょいと取り上げる。我ながらなんて質問を投げかけているんだとも思うが、その心配はすぐに掻き消された。
俺が取り上げた本のタイトル。そこには『ラウラ復讐伝記』と書かれていた。
「絵本読んでいるのかと思いきや……今は無き偉人が書いた実話だろ、これ。お前けっこうすげぇの読むんだな」
「……別に……」
ソルトがようやく口を開く。が、目は合わない。
「……他は?何読んでるの?俺あんま本読まないからさ、本が好きな奴ってどんなの好むのか気になっちゃって―――」
「……それ、やめてもらえませんか」
ぴしゃり、と俺の言葉はソルトの言葉で両断される。
「……え?」
「……だから、僕の機嫌をとって言葉を引き出そうとする、それ……。迷惑、です。話し相手がほしいなら……暗い僕に構うより、そのままフィリア達と話していたらいい、です」
じ、とソルトは暗い目で俺を睨む。
……魂胆見え見え、ってところか。
「悪い。気を悪くしたか」
「……わかったなら、向こうに……」
「なぁ、俺、何もからかおうと思ってお前に話しかけてるんじゃないよ」
背を向けようとするソルトを、俺はまっすぐ見る。
「ただ、俺はさ。お前と話したいだけなんだぜ?」
「……僕は話したくありません」
「だってさ、初めての奴との会話ってわくわくするじゃん。俺は境遇とか考えてることとかで話す相手を選んでんじゃねぇの。……つうか俺そんな器用な真似できねぇし……『初めて会った奴』と話したい。そんで、お前が何か悩んでんなら、その次に何か力になれることをしてやりたい。それだけの理由なんだけど……納得できねぇかなぁ?」
あくまで無理に聞き出さず、冷静に、相手の警戒を解くように。俺は口下手なりに言葉を紡ぎながら、優しく微笑んだ。
ソルトはちら、と庭の入口に目をやる。俺もつられてソルトと同じ方向を見る。フィリアはいつのまにかいなくなっていた。
まぁ、無理に話してもらうのもな。気分じゃない時もあるか。
諦めてその場から俺も立とうとした時。
「それならこれを見てください」
俺が庭の入口へと腰を浮かした刹那。ほぼ同時に、ソルトが小さく口を開いた。
「……えっ」
まるでフィリアがいなくなるのを見計らうかのような機転。その変わりように、俺は若干戸惑う。
ソルトはというと、積んでいた本を控えめに俺に差し出していた。その様子に一瞬生まれた違和感は、再び俺の中から消えていく。
「お。おー、ありがとうな。……なになに……」
俺はそれを受け取り、タイトルを見てみる。「静謐パラフィリア」「殺戮を愛した子ども達」「人体構造図解」。……なんだ、これ。
どれも子どもが読むにしては不適切に感じられるラインナップのように思えるが……。
「……フィリアがさ。こういう本は子どもによくないから、って、あんまり読ませてくれないから。……あんまりバレたくないんだよね」
ぽつ、ぽつ、とソルトは話す。
「……だから、ずっと黙ってた、のか?」
「……あんまり話したくないのはほんとだよ。でも……静かな子どもでいた方が僕達にとってはいいからそうしろって……グレイが」
「グレイが?……そういえば、ドロシー言ってたな。『ハーランドの殺人鬼』を捕まえるって。それがお前達の計画?」
「……うん」
「……はぁ~、すげぇこと考えてんだな」
自信なさげにソルトは頷く。
「もしかしてソルトは、お前の家族を殺した奴とそいつが同じ奴だと踏んでいるんじゃないか?」
「……可能性は、ある。でも、……もしかしたら……」
何かを気にするようにフィリアがいた方を見る。
「……フィリア?フィリアがどうかしたか?」
「……ううん。何でもない、です。……それより、ラルフさん」
「うん。なんだ?」
「強くなるにはどうしたらいいんですか」
ソルトは俺をまっすぐに見た。初めて合う目を逃さないよう、俺も見つめ返す。
「……強くなりたい理由があるんだな。話の流れ的に、殺人鬼が関係してるって解釈するけど、いい?」
「……うん」
「……そっか。殺人鬼を……いや。自分を殺した奴を捕まえたい?……もしくはそれ以上を求めて――」
「無理に決まってます、よね」
ソルトは俺の言葉を遮るように口を開く。
「……ただの子どもが何考えているんだろうって、……自分でも思うんです」
「いーや?すげぇなって思うよ、そうやって考えられるのも、無理、というだけで『求めている事』の否定はしないって事もさ」
「……っ」
「強くなるには、だっけ。簡単な話だぜ」
「!……どう、したらいいんですか」
「ふふん。それはだな……まずは俺と友達になる事!」
「……えっ?」
「俺と友達になればいいことたくさんだぜ。まずは俺の明るさでそんなくら~い顔する暇はなくなる!アイリスにハクに、すげぇ仲間とも仲良くなれる!」
俺は自分の胸をドン、と叩く。
「……まぁ、俺も剣の扱いはまだまだ最強には程遠いかもしれねぇから……本当に強い奴がいれば、そいつを師匠にでもした方がいいかもしれねぇけど……あ!勿論、俺達を信用してもらって!お前の事も教えてもらうところから始まるけどな」
「……不思議な人、ですね。勇者と謳われている人が復讐を手助けしようとする、なんて」
ソルトは薄く笑う。その年齢と不釣り合いな笑みに、俺は心が痛む。
「友達、なら……なってもいいかなぁ」
ソルトは小さく呟く。その呟きに俺はふ、と息を吐いた。
「ありがとな。ソルト」
「別に……。でも、ラルフさんを仲間にしたわけじゃ、ないです。勝手に仲間にしたら……ドロシーとグレイが怒るから……」
「ははっ別にいいよ。まずはお前の出来るとこからでいいからさ」
「……うん」
「それじゃあ……話の流れで聞いちゃうけど、いい?……教えて貰えるか?お前の知ってる事」
「……わかり、ました」
ソルトは小さく頷くと、口を開いた。
「ラルフさんがどこまで知っているかは分からないから、僕がわかってることを話しますね。……まず……僕の知っている殺人鬼のお話は……ふたつ。……一つ目。ここ、ハーランドには今、殺人鬼がいる。子どもばかりを狙って、大人の目がないうちに子どもは行方不明になってしまうんです」
「その『狙われた子ども』は数日後に帰ってくる奴もいるが、共通して『腹を裂かれている』んだったよな」
「うん。……でも、そのお腹は一晩過ごしたら、朝には傷ごと何もなくなっているんです。おかしいですよね」
「……それがどうしてか、までは分からないんだったか」
「……そう。……それでね、二つ目は……」
そこまで話してソルトの顔色が悪くなる。俺はその理由を理解して、目を伏せた。
「……お前の故郷の事、か」
「……うん。……あのね、僕の故郷は旧アルネスト村、っていう田舎町なんだけど……そこに3年前、殺人鬼がやってきたんです」
「3年前にも殺人鬼、……か」
「……そいつがね、僕のお父さんとお母さんを、ぐちゃぐちゃにして……」
ソルトの声が震えてくる。俺はソルトの背中にそっと触れた。
触れた途端びくっと肩を震わせるが、抵抗はしない。
「……ソルト。無理すんな。人を殺されて正常でいられる人間なんて大人でもそういない」
「……っ、……すみ、ません……すみま、せん…でも、……言わなきゃ……」
ソルトは涙ぐんで俯く。強がっていても心の傷は本物なのだろう。俺は心を痛めた。
「……僕、その時旧アルネスト村に来た殺人鬼と、ハーランドにいる殺人鬼、おんなじ人だと思うんです」
「……まぁ、そう考えるのが自然か」
「でも……」
「でも?」
「……やり口が違うんだ。僕のお父さんとお母さんは殺されても、傷が消えたりしなかった……」
「……ソルト……」
「……だからね、僕、知りたいんだ。殺人鬼の人はなんで僕のお父さんとお母さん……町の人を襲うのか。知って、聞いて……それで……」
「……それで?」
「……そこから先は、考えてない」
ゆっくり、ソルトは首を振る。
「……でも……僕、知らなくちゃ。お父さんたちがなんで死んじゃったか、死ぬ必要があったのか……それを知らないと、お父さんたちが死んだ意味、誰にも知られないままだから」
「……お前のやりたいことはまぁ、なんとなくわかったよ」
俺はにこ、と笑いかけた。
「捕まえる手段、明日にでも一緒に考えてやる」
「!……本当?」
「あぁ。お前の思い、よく分かったからさ」
俺は安心させるようにはにかんだ。子どもが殺人鬼を捕まえる、なんて現実離れしすぎている。実現するかと言われたら、難しいどころか無謀なのが正直なところだろうが。
俺は、どうしてかソルトの思いを無下に出来なかった。
「ほら、もう遅いから部屋ん中戻りな。フィリアさん達が心配するだろ?」
「!あ、ほ、本当だ。……戻らないと……またドロシーに怒られる」
「ははっ、ドロシーってさっきの女の子だろ?仲が良いのか?」
「う、うん。僕の友達、……僕よりずっと強い女の子で、とっても可愛いんだ。……たまに怖いけど…」
「ははっ、優しいけど怖い。うちのハクみてぇだ」
「ハクさん?そうなの?」
「あぁ。おっかないんだぜ?あいつ。ちょっとした冗談とか言って俺に弓矢向けてきた事あるもんな」
「……それ、かなり怖いかも……」
くすくすとソルトは笑う。その様子を見て俺もふ、と笑みを浮かべた。
「…っし!そうときまりゃ、今日はゆっくり寝るんだな。明日また庭に来てくれ。その時に……ドロシーとグレイも呼んで、作戦会議をしようぜ」
「う、うん。……ありがとう。ラルフ」
ソルトと俺は立ち上がる。ソルトの抱える本を代わりに抱えると、俺達は2人で室内に戻っていった。
*ソルト ~アルドニア王国「ハーランド修道院・礼拝堂」にて~
その日の夜。礼拝堂には僕達3人分の幼い声が響いていた。
燭台の灯りが僕達の影を揺らがせる。不安定な空気の揺らめきが不気味に思えて、昔からこの場所は苦手だった。
ではなぜこんなところにいるのか?答えは簡単だ。それは僕達の計画のため。僕達の計画に大人の手は入れてはいけない。大人の目を盗んで秘密の会話が出来るのは、夜中のこうした静かな場所こそが最適であるからだ。
『殺人鬼を捕まえる』。最初に言い出したのはドロシーだ。そこに何の私怨が含まれているのかまでは教えてくれなかったが、なかなか現実離れした無茶なことを言うな、と思った。
次に誘いに乗ったのがグレイ。グレイに関してはちょっとした好奇心からその話に乗っているようだった。そりゃそうだ。『悪い人を捕まえる』なんて勇者のようだもの。子どもの僕達にとって何より憧れる存在だ。実際、孤児院の自由遊び時間でも勇者ごっこをしている友達はたくさんいる。
一方の僕はというと、二人の話に半ば流される形で計画の仲間入りをした。所詮は子どものごっこ遊びだ。本当にそんな計画が達成出来るとは思っていない。
それに、もしも出来るのならそんな程度で僕は満足しない。
出来る事ならもっと、もっとそれ以上の――。
「ねぇ、ちょっと聞いてるの?」
ドロシーの不満を含んだ声が僕の思考を断つ。
いけない。考え事にのめり込みすぎて、ドロシー達との対談からすっかり離脱してしまっていたようだ。
「ご……ごめん!えっと、なんだっけ……」
「だから!アタシ達の計画についてよ。……ソルト。貴方まさか、あの旅人たちを信用しているんじゃないわよね?」
「まさか。……僕、あの人達と話してすらいないんです。……いつも通り、じめじめした子どもだって……思われただけですよ」
「うそつき」
むん、とドロシーがむくれる。その顔にか、はたまた鋭いツッコミにか、僕はドキッとする。
「グレイが貴方と、勇者の人がお話しているのを見たって言ってたわ。……どういうつもり?これはアタシたちだけで進める計画だったはずよ」
「……グレイが?」
「ごめん。……見ちゃったんだ。でも別にやらしい事してたわけじゃないだろ?なんで『喋ってない』と言ったんだ?」
「……それは……怒られると思ったから……」
「怒られるって、ドロシーに?」
「ちょっと。なんでアタシ限定なのよ」
「……ごめん…。……でも、あの人達は信用できます。少なくとも、……勇者の人は」
「ラルフ、だっけ。……そう思える根拠は?」
「……勘、かな」
「……うそでしょ」
頭から水を被ったような顔で、ドロシーは頭を抱える。
「そんな理由でだけで、大人を信用したっていうの……?」
「……ドロシー、グレイ。二人にもよくあの人達を見て欲しいんです」
僕はじ、とふたりを見る。
「あの人達は君達を苦しめた大人とは違います……きっと。ラルフと話したけど……あの人、多分嘘がつけないんだと思うんです。誤魔化すのが下手なんだ、……いい意味で」
「大人が思うほど子どもは馬鹿じゃない。でもそれはきっと逆もそうだ。大人の中でもいい人はいる」
「だからって頼るのは……」
「頼るんじゃない。『利用』すればいいんですよ」
「物はいいようだな。……ソルト、そんなキャラじゃないだろうに。僕達を納得させる言葉選びをしようとしていることくらい、分かる」
グレイは伺うようにドロシーを見る。
「……君を否定するわけではないんです。……でも、もし『本当に』計画の実現を望んでいるのなら。……このまま子どもだけでやれることには限界があると思う」
「……なによ、それ…」
僕の言葉に。ドロシーの顔色が曇る。
「あなたはいつもそう。自分の考えばかり優先して、アタシたちにはルールを守れとうるさいくせに、自分はいざという時ルールを破るのよ」
「そういうわけじゃないです。僕はただ、たった3人の子どもが殺人鬼を捕まえるのは難しいから……少しでも助けを借りて、いい方向に持っていこうと……」
「貴方気付いてないの?それってアタシ達3人だけの秘密にしようって言ってきたことを、急に『無理だから』って勝手に破っているのと変わらないのよ」
「そんなつもりじゃ……」
「大体、『君達を苦しめた大人』ってなに?自分はまるで違うみたいな言い方。そうよね、貴方は愛されていたもの。パパとママに」
「……ドロシー?」
僕ははっと顔をあげる。同じく異変を察知した様子のグレイもドロシーを見つめる。
「貴方は知らないものね、視界が大人に囲われて逃げ出せない絶望も……その隙間から見える空がどんなに広くて虚しいことも!」
「ドロシー、少し落ち着け。ソルトの言い分も……全部が全部、だめなことを言っているわけじゃない。ドロシーもそれはわかってるだろ」
「ふふっ……グレイもソルトの判断が正しい、っていいたいの?本当に、本当に馬鹿みたい……大人にバレないようにって今までやってきたじゃない。一番大好きなフィリアにさえ、私達はずっと嘘をついてごまかしてきたのに、あんなぽっと出の、勇者のことを信じてしまうなんて。そんなんだから―――そんなんだから、ソルトはパパとママも殺されちゃうんだわ」
「……なっ!」
ドロシーの言葉に、僕の身体は自然と動いていた。
飛び出した僕の手が、ドロシーの頬を張り飛ばす。
「なんてこと言うんだ!……っ君に、僕の何がわかるんですか……!」
「やめなよふたりとも!!」
「はは、……なによ、仲裁でもするつもり?グレイも本当は子どもだけで殺人鬼を捕まえるなんて出来るはずないって、心の底では馬鹿にしてたんでしょう!?」
「何言ってんだ!そんなこと思ってない、どうしたんだよドロシー!ちょっとおかしいぞ!」
「ふふっ……おかしい?アタシはおかしくないわ。おかしくなんて……ない!」
ドロシーの目に涙が浮かぶ。
僕なりに配慮をしたつもりだった。フィリアにバレないように、できるだけ信頼のおけそうな実力者に協力を仰ぐ。ラルフは大丈夫だ、少なくとも僕達の見方でいてくれると。……あぁ、僕は余計なことをしてしまったのか。
僕の頬を張り飛ばした自分の手が痛むのを感じながら、僕はグレイとドロシーの口論を遠くに聞いていた。
「きれいごと言わないで!何もできないくせに!」
「わかった!大人の手を借りたくないってのはわかったよ!だからまた一旦話し合おう、俺ら子どもだけでも、殺人鬼をどうにか出来る方法を!」
叫びのようなグレイの声は、静寂な礼拝堂にはよく響いた。
「へぇ、それは興味深いね♪」
突如声をかけられた。『聞き覚えのある声』に。
「……え、」
次の瞬間。
僕の隣にいたグレイの首が、音もなく飛ぶ。
グレイの首が、ドロシーの足元に転がった。
「―――は?なん、――」
「きゃあああああああ!!!!!」
反応する事も出来ず、僕ははくはくと唇を動かす。
言葉が、出てこない。
代わりにドロシーの悲鳴が、聖堂内にこだまする。
「いや、いやよ!グレイ、そんなっ!!」
泣き崩れるドロシーと、転がったグレイの頭をただただ見下ろす。そんな、なんで?どうして!
視界が白むのをなんとか抑えようと踏みとどまる。
こんなところで気を失うわけにはいかない。頭の中の記憶がうるさく警鈴を鳴らしている。
逃げなきゃ。逃げたくない。逃げなきゃ。
涙が溢れだす。この感覚、僕には覚えがあった。
声の主は誰だ。思い出せ。
そう、この感覚。急に大事な物を奪われる感覚。恐怖。戦慄。
早く、早く、早く。
「――あ」
恐怖に陥る中で僕は確信した。
グレイの立ちすくむ身体を蹴る大きな人影。抵抗する意思もなく、ただ重力に倣って、今しがた死体になって倒れ込むグレイの身体。
僕は無理やり顔を動かし、その人影を見上げた。
「久しぶりだねぇ。あ、僕の事は覚えてるぅ?」
赤と青の奇妙な服。とらえどころのない喋り方。
「危ないよぉ、こ~んな夜更けに子どもだけでお話するなんて」
……あぁ、思い出した。
「わる~い人に連れてかれちゃうよ?」
奴が、帰って来たんだ。