第一章 「冒険の始まり」

#07 『ルミエラの加護』

*ラルフ ~オーラニア王国「ヒュドラ・ヒュドラ教会」にて~ 

教会内で暴れまくるレーム豚やチャケット鳥、オウム牛の群れ。その攻撃から避けるようにしながら、俺達は走り回っていた。

「おい!アイリス、大丈夫か!」

「う、うん!こっちは平気……うわっ」

レーム豚の突進をすんでのところでかわす。一度座り込んでいたアイリスも、あの後すぐに立ち上がり戦闘態勢に入っていた。が、杖を構えようにも構えられず、攻撃を避けるのだけで精一杯のようだ。

「おい、ラルフ!アイリスちゃんだけじゃなくて俺の心配もしてくれん!?」

「今はそれどころじゃ……って、あぶねっ!」

横槍のようにバトラーの嘆きを聞きながら、俺に突撃してきたオウム牛をかわした。

視線の端で、バトラーがチャケット鳥につつかれながら逃げまどっているのが見える。

ご、ごめんバトラー。

「くそ、次から次へと!」

かわしてもかわしても、リーシャの召喚した動物達はまだまだたくさんいる。これを全て倒しきるのは現実的に無理じゃないのか?

なにより、教会の床には村人達が伏している。避けながら足元も気にしていると、思うように動けない。まずはこの状況をどうにかする他ない。

「どうするラルフ!このまま戦ってたら、倒れてる人達が怪我をするのも時間の問題だよ」

「あぁ、まずはこいつら外に出さねえと!!どう倒すかはその後だ!!」

「でもどうやってやる?」

「俺が引き付けるから、アイリスは先に外出てくれ!バトラーさんは――

「お、俺は引きこもらせてもらうぞ!!」

皆まで言う前に、バトラーが声をあげる。さも当然と言わんばかりに、扉へと駆け寄っていく。

「こーいう面倒事はお前ら勇者が片づけるってのが約束なんだよ!ほら、この俺が教会の安全を確保すっから!!だからお前らはさっさと外でドンパチやってくれって!」

こ、こいつ。

まぁ、悪戯に怪我人を増やすわけにもいかない。始めからそうしてもらう気ではあったが。

「あー…はい、分かったよ。……じゃあバトラーさん、教会内のことは頼みました!」

「へいへい、いわれなくてもな!」

俺の言葉を合図に、アイリスは教会を飛び出す。俺は剣を引き抜き、動物の群れへと振りかざした。

「お前ら!!獲物はこっちだぞ!!」

剣を頭上へと掲げながら、俺は出口へと駆け出す。俺の後を追いかけるように、動物達が暴れながら走り出す。

「いいぞ、そのまま……っ今だ、バトラーさん!!」

「へーい、あばよ!!」

俺と動物が飛び出したのを見計らい、バトラーは教会の戸を勢いよく閉める。教会の前には俺とアイリス、そして動物の群れが対峙する形となった。

飛び出してきた勢いのまま、動物の群れへと身を翻しそのまま――切りかかる!

―――――!!」

思わず耳をふさぎたくなるような形容しがたい鳴き声をあげ、俺が切りかかったオウム牛やチャケット鳥が次々と倒れていく。弾の作成に手間取ってはいるものの、俺に加勢するようにアイリスも杖から光の弾を飛ばしては、攻撃を仕掛けていく。

「へぇ、少しはやるのね」

再び頭上から声がする。いつのまに移動してきたのか、教会の屋根の上に腰掛けながらリーシャが俺達を見下ろしていた。

「でも、甘いわね。ここ『ヒュドラ』は自然に恵まれている分、家畜の質も良い……家畜を育てるにはもってこいの場所なの。そんな場所の家畜の殆どをかき集めているのだから……このままの勢いで戦って、はたして持つのかしらね」

リーシャは再び、地面へと薬品瓶を叩きつける。割れた瓶からはみるみる煙があがり、やがて質量を帯び動物の姿へと変貌する。リーシャの言う通り、いくら倒してもこれではじり貧だ。

……っ、お前がどんどん生み出すからだろっていうかこんなことして何になんだ!?ヒュドラの人達は何もしてねぇだろ、ヒュドラの人達にも危害を加える目的はなんだよ!?」

「それは貴方達が知る必要はないわね。まぁ、強いて言うのなら……気まぐれ?」

「っ、……最低だ!!」

「何とでも言ったらいいわ。……さぁ、次の手段はなぁに?」

「っ!!」

リーシャに気を取られているうちに、低空飛行をしかけてきたチャケット鳥が俺の足元を掬う。バランスを崩した俺に、勢いよくオウム牛が突進してきた。

受け身を取れないまま、俺は思いきり腕を噛まれ――そのまま地面へと叩きつけられる。

……っ、」

「ラルフ!!」

驚いたアイリスが俺へと視線を向ける。余所見をしたアイリスを恰好の餌とでも言うように――レーム豚が迫る!

「危ない!避けろ!!」

「えっ!?っ!!」

すんでのところでかわしたアイリスがそのままバランスを崩し、地面へと尻もちをつく。尻もちをついた先を狙うように、再び低空飛行を行っていたチャケット鳥が鍵爪でアイリスの肩へと切りかかった。

「あ……っ!!」

「アイリス!!」

アイリスの肩に血がにじむ。血の匂いに興奮したのか、チャケット鳥はつんざくような鳴き声をあげ頭上を飛び回る。

「くそ……っ!これじゃリーシャの言う通り、しらみつぶしにも程があるぞ!もっといっぺんに倒せないのか!?」

……全体攻撃が出来ればいいけど……だめ、これが限界……!!」

「くそっ……このままじゃ俺らの方が先に!」

とどめと言わんばかりに、倒れ伏す俺らへと容赦なく群れの突進が迫ってくる。

……そして。

「だーーーー!!!くそ!!!………っ、仕方ねぇなぁ!!!」

突如、その声が教会の庭に響いた。

 

*バトラー ~オーラニア王国「ヒュドラ・ヒュドラ教会」にて~ 

 

俺は扉を閉めた後、もたれるようにしてずりずりと座り込んだ。

無理無理無理無理、こんなの聞いてないって。

俺はただ、あの王様の言う通りミサをしただけだ。

これが、なんだ。こいつらさっきまで俺と祈り捧げてたじゃんか。

なんでこんなことになっちまったんだ。何で襲撃されなきゃなんねぇんだ。

それに、錬金術師のあの女。あの女は……

いや、考えても無駄だ。なんだ?遅効性の毒?俺がピンピンしてんのはまぁ、そう言う事だろ。でも村の奴らは?村の奴らはこのまま、死ぬ?

……そんな事……そんな事、あって良いのか。
「……どうすりゃいい。いや、まずは俺が、……俺が…」

「俺が生き残る方法を探さねぇと、……かい?」

「っ!!」

突如遠くから声がした。

……奥の方からか?

恐る恐る、声のする方へと近づいてみる。

「だ、誰か起きてんのか?」

……アタシだよ、あんたの産婆」

「っ、ノン!なんだ、お前も来てたのか」

俺の言葉に返事をしながら、見慣れた顔が祭壇の陰から姿を覗かせる。体が起こせないのか、顔だけこちらに向けて見せた。

「アタシが大事なミサをサボるわけないだろう?……あんたじゃあるまいし……それより、厄介なことになったねぇ」

……ほんとだよな。こんなの聞いてないんだが」

俺は再び倒れている人々の姿を一瞥し、すぐにノンへと視線を戻す。

……っていうかノンは大丈夫なん?」

「いーや?……さっきから胸がむかむかして仕方ない。……どうやらアタシはここまでのようだねぇ」

……は、」

「毒に侵されるのも時間の問題なんだろ?……あの嬢ちゃんが言うにはさ」

たしかにあの女は遅効性の毒を撒いた、と言った。死ぬのも時間の問題だと。

……はっ、なんだお前?このままくたばるのがご所望ってやつ?」

「んなわけあるかい。まだまだやりたい事いっぱいあるよ。でも毒を吸い込んじまったんじゃ仕方ないだろう?……アンタは動けんだろ?こんなとこでウジウジしてないで、今のうちに村の為に出来る事をしな」

……っつってもよ」

ノンの言葉に俺は苦虫を嚙み潰したような顔をする。実のところ、俺は自分さえ助かれば他は正直どうでもいいのだ。自分の命に代えられるものはない。町の人なんて俺の人生においてはほぼモブだ。ただでさえ死亡の御旗が立ちやすいこの御時世、面倒事には出来る限り関わりたくない。

……その面倒事に…身内が関わっている場合を除いては。

「~~~っくそ!!仕方ねぇな!」

俺は頭をガシガシ搔き、盛大に溜め息をつきながらノンの手に触れる。驚くノンを気にも留めず、俺は肺のあたりに意識を集中させた。

ノンの虚ろな目に、みるみる生気が戻っていく。

「っ、」

それと同時に、俺の胸元にずっしりと重たい感覚がのしかかる。

ノンに完全に正気が戻ると、俺はそっと手を離し立ち上がった。

……あんた、何したんだい?」

驚くノンをよそに、俺は起き上がろうとするノンを慌てて制する。

「まだ寝といた方がいいぜ、まだ安定してないからな。……この力は神父だけのトップシークレット。じゃ、俺の出番って事で……さいなら、ちょっと仕事してくるわ」

この力あんま使いたくねぇんだよな……俺が痛ぇし。

そう愚痴をこぼしつつ、重い胸元を抑えるようにしながら、俺は扉へと突き進んでいく。

扉に手をかけ、勢いよく息を吸い込み――そして。

 

*アイリス ~オーラニア王国「ヒュドラ・ヒュドラ教会」にて~ 

 

突如叫び声が響くと同時に。

刹那、重くなり果てていた私の身体がふと軽くなった気がした。肩を見ると、先程チャケット鳥に切り付けられた跡がみるみる塞がっていく。

……こ、これは!?」

「なんだ、どうなってんだ!!?」

見ると、私と同じようにラルフの腕の傷も塞がっていく。ラルフも状況を吞み込めていないみたいで。

「はーーーーはっはっは!!!驚いたかバカめ!!!!!」

教会の扉が勢いよく放たれたかと思うと、扉の前にはバトラーが胸の十字架を握りしめこちらを強く睨んでいた。テンションも口調も何も変わらない。そう、それだけは。

私は出てきたバトラーに目を疑った。先程まで無傷だったはずのバトラーには、みるみるうちに傷が増えていく。私が負った切り傷に酷似した傷が、ラルフが負った噛み跡が、バトラーの――私やラルフと全く同じ場所に浮かび上がっていく。

 

それはまるで、私とラルフが受けた傷が、そのままバトラーに受け流されているような様子で。

「俺も腐っても神父だ!!この教会のな!!!ちいせぇ魔法くらいは使えんだよ!!!バーーーカ!!!」

「ば、バトラー!一体何を、」

「はっ、この魔法だるいくらいデバフかかるから出来るだけ使いたくねぇってのに……くそっ、何でこの俺がこんな役背負わなきゃならん?勇者がもうちょい強けりゃなーーあーあー」

わざとらしく悪態をついているけれど、額に汗が滲んでおりとても余裕そうには思えない。

痛み分けが使える神父、……なるほど、邪魔者のご登場というわけね」

「い、痛み分け?……魔法、って一体」

「……成程ね」

リーシャがふと屋根から立ち上がり、蒸気を噴射する。煙はみるみる庭を満たし、その場にいる全員の視界が奪われていく。

「状況が変わったわ、今日はこの辺りにしてあげる。残りの子豚さん達のせん滅、頑張ってね。また会いましょう、ひよっこ剣士さんに青の魔導師さん」

「は!?おい待て、リーシャ!!」

ラルフの呼び止めを物ともせず、リーシャはその場からふわりと浮き上がる。煙に映ったシルエットはみるみる遠ざかり――煙が晴れた頃には、リーシャの姿は忽然と消えていた。

「い、いなくなっちゃった……?」

私はふらつきつつ、杖で体を支えながら立ち上がる。数こそ減ったものの、リーシャが直前まで召喚していた動物達の目が私達をじっと捉えていた。

その動物の目を見つめ――ふと、私はある既視感に気付く。

この子達の目……あの時のグリフォンと『全く同じ目』だ。

……これって、もしかして。

私は杖を思いきり高くかざす。杖に意識を集中させ、成功場面を想像し――杖がほんのり蒼く輝き出す。

「あ、アイリス?一体何を、」

――Toxotes”!!」

ラルフの問いを遮るように、私は呪文を唱える。……お願い、成功して!

杖からは一筋の光が溢れ、動物達に降りそそぐ。動物達は私達に向かってうなり声をあげていたものの、光に反応するように体をぴくりと震わせ――

――そのまま私達の方へと再び突き進む。

「!っきゃ……

突然の行動に驚き、それに比例するように蒼い光が弱まる。……駄目、今魔法が切れたら……

「はいはい、集中!」

取りこぼしそうになる私の杖をキャッチするように、バトラーが支えてくれる。私の蒼い光に混ざるように、白い光が杖から放たれた。

これは――バトラーの魔法?

私とバトラーの光を浴びた動物達は動きを止め、やがて聞き覚えのある穏やかな鳴き声へと変わる。

チャケット鳥も、オウム牛も、レーム豚も。本来の動物らしい動きにみるみる戻っていった。

「へーえ?狂化を解こうとしたってわけだ。やるな、アイリスちゃん」

「狂化?……って、グリフォンの時の?」

1人置いてけぼりになっていたラルフが口を挟む。

「う、うん。グリフォンの時と同じ目をしていたから、もしかしたら……と思って。……成功みたいだね、バトラーの補助のお陰だよ」

私は首をすくめて笑う。そう考えると、あの時のグリフォンの狂化もあのリーシャが手を加えたものだったのかも?

狂化に気付いたとはいえ、今のはバトラーが助けてくれなければ狂化を鎮めることは難しかったかもしれない。

「ははっ!当然だが?俺の力は世界一ってね!」

バトラーは私の言葉にどんと胸を張り、得意気に笑っている。その様子に割って入るようにラルフが口を開いた。

「つーか魔法使えたんですね?バトラーも」

「魔法?馬鹿言っちゃいけねぇ。魔法なんて大それたモン使えて溜まるかっての。俺にはついてるのさ、『ルミエラの加護』がな」

「ルミエラの、加護?」

「そ。ヒュドラ教会代々伝わる神の恩恵ってやつ?とにかくここに仕える神父は簡単にくたばんねぇようになってんの。信徒を命に代えても護ることを条件にな」

「命に代えても……

「ま、神父としては当然の条件ってわけだな」

ルミエラの加護。神に近しい者であれば、神の力と似た力を使う事が出来るということなのかな。

「つまり、その恩恵で得た力が痛み分けってことか?」

「そーいうこったな。俺の手にかかりゃ、目の前にいるぼろぼろな命も一目見るだけでピンッピンよ」

ま、その分自分にかえってくんだけどね。とバトラーはわざとらしく溜め息をつく。

「ま、腐っても俺はこの町の神父――この町の中心人物みたいな?立ち位置だからさぁ。この倒れてる奴らをどうにかしてやるのも自分ってわけよ。あーあほんとめんどくせえ」

「それもその痛み分けを使うの?」

「そ。チマチマ1人ひとりのダメージを引き継ぐ感じかね。ダメージを受け持つことが出来る分、自分の傷は自然治癒を強いられるわけだからさぁ……ほんと勘弁してほしいっつの?ま、無理ない程度にやってやるけどさ」

やれやれと言わんばかりにバトラーは首を振る。私はふとした疑問を口にした。

……そういえば、ノンさんを見なかった?」

「あ?あー……ノン?」

「うん。宿屋で目を覚ましたらノンさんがいなくて……それで嫌な予感がしてノンさんを探しに来たのだけど」

「あー、そゆこと……。ノンは……あぁ、ノンも無事だよ。お前らがドンパチやってる間に俺が助けてやった。今はあいつらと同じように寝てるよ」

「そっか……

「…?と、いうことは……毒を取り除く……って、まさかバトラーさん一人で町の人全員分の毒を吸収するんですか?」

「それ以外になにがあるっての。え、なに?もしかして心配してくれてんの?」

「い、いくらバトラーさんでもさすがに……。な、何か手伝えませんか?」

「手伝う?ははっ!そりゃありがたいね。できれば交代してくれん?って感じだが……ま、俺は大丈夫よ。さっきも言ったけど、俺ら加護を受け取ってる奴は簡単にくたばんねぇようになってんの。お前らはお前らで別にやる事あんだろ?そっち優先するんだな」

「わ、わかりました。無理はしないでくださいね」

「へーへー。言われなくてもな」

私達の心配をよそに、その神父はケタケタと笑う。

私とラルフは顔を見合わせ、……やがて苦笑するようにバトラーにお礼を交わしたのだった。

 

*ラルフ ~オーラニア王国「ヒュドラ・ヒュドラ教会」にて~ 

 

「で、お前らの次の目的地は……まぁ、もうわかってるだろ?」

バトラーの問いに、俺とアイリスは頷いた。

「あぁ。オーラニアより東に位置する国……

「アルドニア王国の王都『ハーランド』、だよね」

「そ。俺が昨日話した事を調べてこい、っつーわけだ。噂程度のものならいいが、それを確かめるには行く他ねぇからな。住民が次々と行方不明になる、なんてフツーじゃねぇし」

「任せてください。……バトラーさんもここの住民の事、頼みましたよ」

「お前に言われなくてもな。俺も伊達に面倒事引き受けてねぇ、後々思う存分だらける為に今は誠心誠意治療に励みますよっと」

やれやれ、とでも言わんばかりにバトラーは首を振る。ひとまずここはバトラーに任せられそうだ。

「おっと、そうだ。こっから隣国へ向かうとなると、来た道を引き返す事になるだろ?来た時はウィルヴァ鉱山の方から来たんだったか」

「うん、そうだよ。迷子になったり襲われたり散々だった……

「ははっ!だろうな。あの鉱山は基本一本道だが、脇道に入っちまったらなかなか複雑だ。……一つ別の道を教えてやるよ。町を出てウィルヴァ鉱山に行きついたら、岩肌沿いにぐるっと左回りに進むんだ。鉱山夫が作った橋があるから、そこを渡らせてもらえ。荒野に出たらそのまま突き進むと良い。そっからの道は……あー、説明がめんどくせえ。あとのことはそこの鉱山夫の誰かに聞きゃ分かるだろ」

「脇道?そんな道あったんですね」

「ま、あくまで炭鉱用の道ってとこだな。そこを鉱山夫の好意で旅人も特別に通ってOKにしてるとか……ま、迷いようなくて安全な分回り道にはなるがな」

「いえ、十分助かります!今度はそっちに行ってみる事にします」

「色々ありがとう!バトラー」

「おー。アイリスちゃんも気をつけてな」

アイリスの言葉に合わせるように、俺も笑って会釈する。

グリフォレイド、得体の知れない奴らだが……この先も襲撃はしてくるのだろうか。

次の目的地は、王都ハーランド。

……と、その前に。

「ミカエルが王都にいないか。まずはそれを確かめる約束だったな。アイリス?」

俺の言葉に、アイリスは控えめに頷く。

「う、うん。……お願いしてもいい?」
「約束は約束だからな。一度戻ってみよう。『一緒に』な」

「うんっ!行こ、ラルフ!」

まずは王都インティウムに戻る為、荒野を目指して。

手をひらひら振るバトラーに別れを告げ、俺達はヒュドラの町を後にした。

 

 

 

 

第一章「冒険の始まり」 END.